退職代行を「弁護士事務所」と「民間の一般的な退職代行業者」どちらに依頼するか迷ったら…
目次
自分の代わりに会社へ退職の手続きを行ってくれる退職代行。
実は、その退職代行にも大きく分けて2種類存在します。
- 弁護士・法律事務所による退職代行
- 一般的な民間業者による退職代行サービス
この2つは似ているようで大きな違いがあることをご存知でしょうか。
今回は民間業者による退職代行サービスと弁護士による退職代行の違いや、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
また、「こんな場合はどちらに頼めばいいの?」と迷った時の選び方についてもご紹介しますので、退職代行の依頼先を考え中の方はぜひ参考にしてみてください。
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民間業者と弁護士・法律事務所の大きな違いは「非弁行為」にあり【業務範囲の広さが異なる】
まず、民間業者による退職代行サービスと弁護士による退職代行の大きな違いについてご説明します。
簡単に言うと、弁護士にはできて民間業者に行えない行為があるということです。
もし弁護士資格を持たない民間業者がその行為を行ってしまうと、それは「非弁行為」となり、弁護士法第七十二条に違反してしまいます。
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
引用:弁護士法 e-Gov
ここに記されている「法律事務」を簡単にまとめると下記のような業務になります。
- 依頼者から法律的な内容の相談を受ける
- 金銭の請求行為
- 日程調整、休暇の取得等の交渉
- 書類の作成代行
- トラブルの法的解決
弁護士・法律事務所に退職代行を依頼するメリット・デメリット
弁護士・法律事務所を利用するメリット
- 会社と交渉ができる(有給休暇の取得、退職日の調整など)
- 未払いの賃金や残業代、退職金を請求できる
- 退職届や申請書類等の作成も代行してもらえる
- パワハラやイジメ、セクハラ等に対する慰謝料の請求
- 保険や年金の手続きをしてもらえる
- その他会社と揉め事があった時に法的解決に動ける
対応範囲が広く、書類作成や保険・年金の手続きなどの面倒なことを丸投げすることも可能です。
また、週休消化や退職金等で会社側からごねられたり、揉め事があった時にも解決に動いてもらえるという点は安心ですね。
弁護士・法律事務所を利用するデメリット
- 民間業者に比べ費用が高額、相談料を取られることも
- 対応日や対応時間が限られる
業務内容が複雑になる関係上、どうしても費用面が高くなります。
民間の退職代行業者に比べて2倍以上かかってしまうことも。
また、営業時間が限られているので相談のタイミングが難しかったり、弁護士の人数不足で対応が遅くなってしまう場合もあります。
民間の退職代行サービスに依頼するメリット・デメリット
民間の退職代行サービスを利用するメリット
- コストが安く、一律料金で行ってくれるところがほとんど
- 24時間365日対応ですぐに退職できる
- 退職代行の実績が多く安心
- 退職後の転職についてもサポートを受けられる
まず、費用面が安く済むのが最大のメリットです。
一律で○万円といった価格設定をしているところが多く、オプション料金等で結局高額になるといった心配もありません。
また、民間の退職代行サービスは「すぐにでも仕事を辞めたい!」という人には大変助かる即日対応を売りにしており、スピード感においては弁護士事務所では敵いません。
民間の退職代行サービスを利用するデメリット
- 交渉や請求といった業務には対応不可
- 書類作成や保険・年金の手続きは丸投げできない
- 悪徳業者に当たる可能性
もし有給消化や退職金の支給について会社に交渉したいと思ったら民間の業者では対応できません。
依頼者の意見や要望を伝えてはくれますが、会社側からごねられたり拒否されたりした場合業者の方で掛け合ってはくれないので自分で解決する必要があります。
逆にこういった揉め事が起きた時に業者が対応しようとする場合は、違反を容認する悪徳業者である可能性があるので任せるべきではありません。
こんな場合はどちらに依頼する?ケース別の適した依頼先
とにかくすぐに辞めたい!
もう今日にでも会社を辞めたいという即日退社希望で、特に会社側と揉める可能性が少ない場合は民間の退職代行サービスがぴったりです。
24時間いつでも連絡が取れ、すぐに動いてくれるのであっという間に仕事を辞めることができます。
また料金も弁護士事務所に比べて格安ですので依頼しやすいといったポイントも見逃せません。
会社がブラックで有給休暇の取得や退職金がもらえるか心配…
相手がブラック企業で有給休暇の消化を拒否されたり、退職金を支払わないと脅してくるといった可能性が考えられる場合は、最初から交渉や請求ができる弁護士事務所にお願いしましょう。
貰えるものについてはきっちりと貰えますし、もし揉め事に発展しても弁護士事務所であれば法的な解決にも動けます。
即日退職したことを理由に会社から訴えられそう…
これはほぼ無い稀なケースと考えて良いのですが、万が一退職代行サービスを利用して即日退社をした時に「ルール違反なので懲戒解雇にする」「損害賠償を請求する」といった訴えを会社から起こされてしまったとしましょう。
その場合はこちらも弁護士を立てて戦わなければいけません。
もしもそういった行動を起こして来そうな会社だとしたら、あらかじめ弁護士事務所に依頼しておいたほうが安心ですね。
こんな民間業者は要注意!業務範囲のしっかりした業者選定を
退職代行が流行りだしたけど、心の隙間に付け込む悪徳業者が発生しそうな気配がある。
— TERU3 (@TERU3_M) May 5, 2019
今現在はケースとしてはとても少ないですが、退職代行の市場はどんどん拡大しているので悪徳な業者が現れることも考えられます。
例えば、弁護士を擁していない民間の退職代行サービスが「うちはこの金額内で交渉や請求業務も行いますよ」とセールスしてくるようであれば、それは違反行為を行う業者です。
依頼者自身にペナルティが及ぶことはありませんが、違反行為のせいでちゃんと退職ができなかったり、悪徳業者による思わぬトラブルに巻き込まれてしまう可能性も。
退職代行を依頼する前にはこんなポイントを確認して、信頼できる業者を選びましょう。
- 公式サイトに会社情報がしっかりと記載されている
- 退職代行サービスの業務範囲を守っている
- なりすまし等の行為を行わないことをちゃんと謳っている
- 顧問弁護士による指導を受けている業者である
- 連絡がきちんと返ってくる
心配であればまずは問い合わせから無料相談を行い、しっかりと退職代行をしてくれそうな業者か見極めてみるのもいい方法です。
まとめ:自分が退職代行に何を求めているか確認して依頼先を選ぼう
民間の退職代行サービスと弁護士・法律事務所による退職代行の違いについて解説しました。
どちらにもメリット・デメリットは存在しますので、自分が退職代行に何を頼みたいのか、どのような対応を望んでいるのかをまずまとめてみるとスムーズに進めやすいでしょう。
例えば、退職に際して必要な書類や手続き関係は自分で準備できていて、あとは会社に辞める意思を伝えるだけの状態なのに、高額な依頼料を払って弁護士にお願いする必要はありませんよね。
逆に最初から会社に慰謝料を請求したいと考えているのに民間の業者に頼んでしまうことも意味がありません。
自分のニーズをしっかり見極めて、最適な依頼先を選んでください。
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