契約期間中だけどもう限界…派遣・契約社員は退職代行で辞められる?
目次
本人に代わって会社に退職の意思を伝え、即日退社できるよう働いてくれる退職代行。
テレビやSNSでも話題になり、近年ますます利用者を増やしているサービスです。
派遣初日、退職代行を調べる私
— へるちゃん (@HerusChan) September 28, 2020
しかし、退職代行のことを調べてみると正社員やアルバイトについての記述ばかりで、派遣社員・契約社員の利用については触れられていないことがほとんど。
就業期間の契約を結んだ派遣・契約社員は、どんなに会社や仕事内容が自分に合わず辛い思いをしていても契約の期間中に退職代行を利用することはできないのでしょうか?
本記事では派遣・契約社員の退職代行利用について詳しく解説していきます。
仕事を辞めたいけれど派遣・契約社員だからと我慢をしている方はぜひ参考にしてみてください。
そもそも何が違う?退職時の無期雇用と有期雇用の扱い
正社員と派遣・契約社員の大きな違いは「期間を定めない契約」か「就業期間が決まった契約」かどうか。
退職代行のレビューでよく見かける「出社なしで即日退社」という事例は、正社員=無期雇用であるからこそスムーズに実現します。
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
引用:e-Gov 民法
つまり、雇用期間の定めがない正社員は、退職の申し出をすれば2週間後に契約が解除され退社できるのです。
退職代行はこの民法627条をうまく利用して、有給休暇など使い出社せず即日退社を可能にしています。
しかし、雇用の期間を定められている有期雇用労働者である派遣社員・契約社員はこの民法を適用することができません。
あらかじめ決められた雇用期間内は自由に仕事を辞めることはできないのです。
退職を考えている派遣社員・契約社員の方はまずこの違いを念頭に置いておく必要があります。
※例外:正社員型派遣の場合
一言に派遣社員と言っても、「登録型派遣」と「正社員型派遣」の2種類があります。
派遣元の会社と正社員契約を結んで、派遣先へ出向する「正社員型派遣」の場合は前述した民法627条が適用されるため、問題なく退職代行を使って即日退社が可能です。
本記事における派遣社員は、派遣元の会社に登録して派遣先で勤務する「登録型派遣」の人に的を絞って解説しています。
契約期間中の退職は原則NG…絶対諦めなきゃいけないの?
ストレスで全然寝れんだ。こんなとこで弱音吐くのあれやけど、派遣先辞めたい。
— とにかく明るいこば (@leHFZql9NAxr8B2) September 29, 2020
それでは就業期間が決まった有期雇用の派遣・契約社員は期間満了まではどんなに仕事が辛くても我慢して働かなければならないのでしょうか?
結論から言うと、契約期間中であっても退職できるケースは存在します。
正社員のように退職の申し出さえすればOKと言う簡単なものではありませんが、条件さえ満たせば有期雇用契約の派遣・契約社員でも仕事を辞めることは可能です。
つまり、退職できる条件が揃えば派遣・契約社員も退職代行を利用して仕事を辞めることは全く問題ありません。
では、その条件について紹介していきます。
1.契約してから1年以上が経過している
労働基準法第137条は有期雇用の労働者に対して下記のように定めています。
第百三十七条 期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成十五年法律第百四号)附則第三条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
引用:e-Gov 労働基準法
簡単にまとめると、有期雇用者が一年を超える雇用契約をした時に、契約した日から一年以上が経過していればいつでも退職することができると言うこと。
例えば3年間の雇用契約を結んでいても、契約日から1年以上働いていれば3年の期間満了を待たなくても仕事を辞めることができるのです。
有期雇用の労働者は雇用期間を楯に無理な労働を強いられたり、都合よく雇用主に利用されてしまうことも考えられるためこのような法律で守られています。
2.やむを得ない理由があっての退職
契約期間中でも、「これは退職もやむを得ないだろう」と判断される理由がある場合は辞めることができます。
「やむを得ない事情」は具体的に定められているわけではありませんが、下記のような働き続けることや出社することが困難であると明らかにわかる場合は退職の理由として認められます。
- 無理な労働や精神的苦痛で心身を病んでしまった
- 雇用時の契約とは異なる仕事を強いられている
- 耐えがたいパワハラやセクハラ
- 遠方への引越しで通勤不可
- 親の介護や育児
退職代行を利用する場合は、こう言った理由を契約先に伝えてもらえば良いでしょう。
3.雇用主の合意が取れている
はっきりとした退職の事情がなくとも、雇用主との間に退職することに対して合意が取れれば契約期間中でも仕事は辞めることができます。
ただ、民間の退職代行業者は雇用主に退職の意思を伝えることしかできません。
それで雇用主が納得してくれれば話は終わりなのですが、もし退職を認める気がなかったり揉めるような事態になったら交渉を行う必要があります。
その場合、交渉は非弁行為となり民間の業者では対応できないので、弁護士を雇わなければなりません。
そうすると高額な費用や交渉の時間がかかってくる可能性が高いので、簡単に合意してくれなさそうな雇用主の場合は前項のような止むを得ない事情を用意しておくほうが安心です。
こんな人こそ使うべき!派遣・契約社員が退職代行を使うメリット
前項で解説した通り、条件が揃えば派遣・契約社員でも問題なく退職代行を利用することが可能です。
派遣社員や契約社員は雇用期間を定めて契約をするため、契約期間中は辞めにくいという立場を逆手にとって無理な労働を強いたりきつい叱責やパワハラのような発言を行う雇用主も少なからず存在します。
そんな状況であっても派遣・契約社員は
- 雇用主には強く出られない
- 会社に迷惑をかけそうで退職は言い出せない
- 就業先、派遣元両方に退職の意思を伝えるのが辛い
- そもそも契約期間中は辞めることができないのでは
と言った悩みを抱えて無理をしてでも働き続けてしまうケースが多いのも事実。
正社員よりも立場が弱いと考えられがちな派遣・契約社員だからこそ、伝えにくい退職の意思を会社に伝えてくれる退職代行サービスは有効であると言えます。
また、退職代行業者は退職のプロですので、「どのような退職理由を提示すべきか」「退職までのプロセスは」という点についても相談に乗ってくれるという点も大きなメリットです。
派遣社員が退職代行を利用するリスクとは
派遣社員が退職代行サービスを利用して契約期間中に仕事を辞めた場合、発生するかもしれないリスクについて解説します。
同じ派遣元を使うことができなくなる
登録型派遣で派遣先で働いている場合、派遣会社の営業担当が派遣先の担当との間に入って契約更新や仕事内容の相談などを行います。
つまり、退職代行業者が退職の意思を伝えるのは派遣先ではなく派遣元の営業担当者です。
あくまで派遣先への退職の連絡は派遣会社の営業担当が行うということですね。
営業担当者としては、自社が売り込んだ派遣スタッフが契約期間中に辞めてしまうのは派遣会社の信用問題にも繋がりかねず、できれば避けたい事態。
辞められる条件が揃っていれば退職を認めざるを得ないのですが、やはり良いイメージは持たれないので、引き続き同じ派遣元から違う仕事を紹介してもらおうと思っても断られる可能性が高くなります。
もし待遇や紹介してくれる仕事内容などで派遣元の会社を気に入って使っていても、退職代行を使うことでもう二度と仕事を紹介してもらえないという状況は覚悟しておきましょう。
契約期間中の突然の退職で派遣先から損害賠償訴訟
結論から言って派遣先から直接損害賠償訴訟される心配はほぼしなくて大丈夫です。
派遣スタッフは派遣先と直接契約を結んでいるわけではないので、契約不履行で訴訟を起こされるとしたらそれは派遣元の会社になります。
そうならないために、派遣元の会社は別のスタッフを補充して穴を開けないよう対応します。
可能性は低いリスクではありますが、万が一の事態もありますので念のため頭に入れておくといいでしょう。
注意:バックレだけは絶対やめましょう
派遣や契約社員に限った話ではありませんが、「派遣先と直接契約していないから」「どうせ正社員じゃないし」などといった理由で連絡もなく仕事をバックレることだけは絶対にしてはいけません。
派遣先・派遣元の会社両方に迷惑がかかるだけでなく、連絡が取れないことで直接家に訪ねてこられたり保証人(両親など)に連絡が行くこともあります。
それだけでは済まず、何か大きな揉め事に発展することも。
バックレることは、上にあげたもの以上のリスクを背負うことになります。
辞めると言い出しづらい、担当者と話したくないといった気持ちが強い人こそ、そうならないように退職代行を使ってスッキリと後腐れなく仕事を辞めるのが向いているでしょう。
派遣・契約社員にも対応している退職代行サービスを選ぼう
ここまで契約期間中の派遣・契約社員の人であっても、問題なく退職代行を使うことができることを解説してきました。
ただ、ここで一つ気をつけなければならない点があります。
それは、利用しようと思っている退職代行業者が派遣や契約社員の退職にも対応しているかどうか。
退職代行業者によっては、利用者を正社員やアルバイトといった直接雇用の人に限定していたり、派遣や契約社員のケースには別の料金を設定していることがあります。
退職代行業者はほとんどの場合自社のサイトを持っているので、依頼を行う前に一度サイトで派遣・契約社員の退職に対応しているか、料金体系はどのようになっているか確認しましょう。
もしサイトから情報を見つけられない場合でもメールやLINEで問い合わせに対応してくれます。
迷ったり悩んだりして退職を先延ばしにしてしまう前に、気軽に連絡してみましょう。
まとめ:派遣・契約社員も退職代行は利用可能!契約期間中だからと諦めないで
契約期間中の派遣社員・契約社員の退職代行利用は、条件を満たせば問題ないということはお分りいただけたと思います。
もう出社したくないと思いながらも、契約が終わっていないからと我慢し続けることはありません。
心身を限界まですり減らす前に、退職代行を利用してスパッと仕事を辞めてしまいましょう。
つらい仕事から解放されて気持ちがリフレッシュしたら、より良い次の職場が見つかるかもしれません。
退職代行業者はたくさんの退職を手助けしてきたプロですから、まずは自分の契約状況や仕事を辞めたい理由などをまとめて相談してみましょう。