退職代行を利用しているのはこんな人!統計データから利用者の傾向を探る
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退職代行は利用者の代わりに業者が会社との間に入り、退職を申し入れるサービスです。
比較的最近生まれたサービスですが、テレビやネットニュースなどのメディアにも何度も取り上げられ、知名度は徐々に高まってきています。
ブラック企業という存在や会社でのいじめ・パワハラ問題が広く認知され社会的な問題になる中、心身がボロボロになるまで働かされてしまう労働者を救う手段として注目され、近年ますます利用者も増加傾向です。
そんな退職代行サービス、一体どのような層の人たちが利用しているのか実情が気になる方も多いと思います。
今回は統計データを元に、どんな人が退職代行の利用者に多いのか、その実態を掘り下げていきます。
退職代行サービス利用者の「男女比率」
まず最初に男女比率から見ていきましょう。
性別 | 割合 |
男性 | 60% |
女性 | 40% |
調査の結果、利用者の割合は男性60%女性40%と男性の方が過半数を占めることがわかりました。
この理由として、まず就業人口における男女比率が関わってくると考えられます。
総務省統計局による「労働力調査(基本集計)2020年(令和2年)11月分」の結果を見ると、総就業人口6,702万人中、男性が3,702万人女性が3,000万人で比率にすると男性が55.2%女性が44.8%となります。
退職代行の男女比率60:40と近い数値であることから、就業人口の母数が男性の方が多いため退職代行の利用者においても男性の方が多くなるのは必然的でしょう。
また、男性は女性の結婚・出産といった退職しやすい理由がないため退職代行に頼る人が増えるという可能性も考えられます。
退職代行サービス利用者の「年齢層」
次に退職代行を利用した人の年齢分布を見てみます。
年齢層 | 割合 |
〜20代 | 60% |
30代 | 30% |
40代以上 | 10% |
結果を見ると30代までの若年層が90%を占めており、その中でも20代までが60%、30代が30%と20代の若者世代がダントツで多いですね。
この結果から、やはり退職代行は若い世代に支持されているサービスであることがわかります。
また、近年は新卒の就職者の離職率の高さが問題視されており、厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況(平成28年3月卒業者の状況)」によると、新規大卒就職者が3年以内に32%も退職しています。
これは新卒の3人に一人が3年持たずして転職していることになります。
こういった20代の若い世代の転職意識の高さも退職代行利用者の結果の一因と考えても良いでしょう。
しかし、40代以上も少ないとはいえ全体の10%と0ではないことから、退職代行の知名度が高まる中で中堅、ベテランと言える年齢層の人たちの利用もこれから増えていく可能性が高いです。
退職代行サービス利用者の「雇用形態」
退職代行の利用者の雇用形態としては70%と「正社員」が圧倒的に多い結果となりました。
雇用形態 | 割合 |
正社員 | 70% |
契約社員 | 15% |
派遣社員 | 10% |
パート・アルバイト | 5% |
まず、前提条件として退職代行は基本的に正社員をターゲットとしたサービスです。
「派遣社員」「契約社員」も退職代行の利用は可能ですが、元々契約期間があるため期間満了まで耐えれば自動的に辞められることから、そこまで利用者の数は多くありません。
また、アルバイトやパートに関しては正社員に比べ業務的にも責任が重くなく、退職自体のハードルが低めです。
最悪「バックレ」という手段をとってもなんとかなることから、退職代行の利用にまで至るケースが少ないでしょう。
正社員は「雇用期間の定めがない無期雇用契約」であるため、契約期間を理由に逃げることができませんので、退職する場合は自分で行動を起こす必要があります。
また、社内でのポストについたり、責任のある仕事を任されるので「辞めたい」と伝えても会社から引き留めに遭うことも多く「辞めたいのに辞められない」という状況もよく起こります。
そんな正社員の「会社から逃げる」方法の一つとして退職代行があるのですね。
退職代行サービス利用者の「年収」
退職代行サービス利用者の年収分布はこちらの表の通りです。
年収 | 割合 |
400万円未満 | 65% |
400万円〜500万円 | 10% |
600万円〜700万円 | 9% |
700万円〜800万円 | 7% |
800万円〜900万円 | 5% |
900万円〜1000万円 | 3% |
1000万円以上 | 1% |
年収400万円未満の人が65%と圧倒的で、そのあとは年収が上がるごとに割合が下がっていくという結果でした。
先ほどの年齢層のデータと合わせて考えると、やはりまだ働き出して年数の浅い若い世代の利用が多いことが読み取れます。
安い賃金で人材を使い倒す「ブラック企業」の存在が退職代行の利用者を増やしているという背景もあり、年収が高い層の利用者は少ない傾向です。
しかし少数とはいえ高収入層と言える800万円以上の人たちも利用しているのは意外ですね。
年収の高い低いは関係なく、働いている以上「仕事を辞めたい」という悩みはつきものだということがこの結果からもわかります。
退職代行サービス利用者の「地域・都道府県」
都道府県別の利用者比率の結果はこちらの通りです。
(図表)
東京都が15.03%と一番多く、続いて神奈川県が7.23%。
やはり大きな企業が集中している首都圏での利用者が多いという結果です。
埼玉5.11%、千葉4.3%に関しては、隣県に居住し都心へ通勤する人が多いため上位に上がってきていると考えられます。
その他大阪、愛知、福岡といった日本の大きな都市も上位に名を連ねます。
しかし、大都市や地方都市だけに利用者が集中しているかといったらそうともいえません。
どの都道府県にも数値は低くとも分布があることから、退職代行サービスが今や全国区に市場を拡大しているということがわかりますね。
退職代行サービス利用者の「勤務先・業界」
では退職代行が多く利用されている業界はどのようなものでしょうか。
都道府県名 | 割合 |
東京都 | 15.03% |
神奈川県 | 7.23% |
大阪府 | 7.01% |
愛知県 | 6.00% |
埼玉県 | 5.11% |
千葉県 | 4.30% |
福岡県 | 4.22% |
北海道 | 3.14% |
兵庫県 | 3.06% |
静岡県 | 2.58% |
茨城県 | 2.27% |
広島県 | 2.22% |
京都府 | 2.04% |
宮城県 | 1.82% |
新潟県 | 1.75% |
長野県 | 1.62% |
岐阜県 | 1.57% |
栃木県 | 1.54% |
群馬県 | 1.53% |
岡山県 | 1.50% |
福島県 | 1.45% |
三重県 | 1.41% |
熊本県 | 1.38% |
鹿児島県 | 1.26% |
沖縄県 | 1.16% |
滋賀県 | 1.12% |
山口県 | 1.07% |
愛媛県 | 1.05% |
奈良県 | 1.05% |
長崎県 | 1.04% |
青森県 | 0.98% |
岩手県 | 0.96% |
石川県 | 0.90% |
大分県 | 0.89% |
山形県 | 0.85% |
宮崎県 | 0.85% |
富山県 | 0.82% |
秋田県 | 0.76% |
香川県 | 0.75% |
和歌山県 | 0.73% |
佐賀県 | 0.64% |
山梨県 | 0.64% |
福井県 | 0.61% |
上位3つの「製造」「建設」「不動産」だけで全体の37.9%を占めており、この3つの業界の利用者の多さが目立ちます。
「製造」「建設」「不動産」はどれも離職率が高いと言われる業界で、退職代行の利用者についてもその影響は明らかです。
製造業や建設業は長時間労働や休日返上の仕事、不動産業界は無茶なノルマを課したテレアポ業務など、いわゆる「ブラック」と呼ばれる心身に強い負担をかける過酷な業務が有名です。
続いて割合の多い5%〜10%の業界は「運輸・郵便」「医療・病院」「飲食」「アパレル」「美容・エステ」の5つ。
どれも体を使う肉体労働が多い業界です。
特に医療関係の仕事は、高齢化で患者は増えるのに若い働き手の人口が減っているという悪循環から「万年人手不足」などと言われるほど労働環境の過酷さが問題にもなっています。
以上の結果から、やはり日常的に激務で身体に無理をかけている業界が退職代行を多く利用していることが読み取れます。
退職代行サービス利用者の「職種・仕事内容」
続いて、退職代行サービス利用者の具体的な仕事内容のデータです。
職種・仕事内容 | 割合 |
営業職 | 12.9% |
軽作業・工場スタッフ | 10.7% |
製造職 | 10.1% |
建設現場スタッフ | 9.0% |
配送・ドライバー | 6.9% |
看護師 | 6.6% |
介護士 | 6.5% |
アパレル販売・接客スタッフ | 6.0% |
美容部員・エステスタッフ | 5.5% |
飲食・接客スタッフ | 5.1% |
事務・内勤・受付等 | 4.3% |
開発・システムエンジニア | 3.7% |
コールセンタースタッフ | 2.2% |
スーパー等の店員 | 1.6% |
塾講師 | 1.1% |
清掃スタッフ | 0.9% |
警備員 | 0.8% |
教職員・幼稚園教諭・保育士 | 0.7% |
歯科助手・歯科衛生士 | 0.6% |
調理師・栄養士 | 0.5% |
ペット・動物看護介護 | 0.4% |
その他・未分類 | 3.9% |
10%を超えるのは「営業職」「軽作業・工場スタッフ」「製造職」の3つ。
それに続いて「建設現場スタッフ」も9%と高い割合です。
やはり上位は肉体労働系の職種が多く、身体への負担が退職を考える理由になり、しいては退職代行の利用へつながっていると考えられます。
特に最も割合の高い「営業職」は一般的にも「営業といえばブラック」というイメージがあるほど身体的にも精神的にもきつい職種と言われています。
ノルマに追われたり、会社と取引先の板挟みになったりと理不尽な目に遭うことも多く、ストレスを溜め込みやすい仕事です。
5〜9%の職種は「配送・ドライバー」「看護師」「介護士」「アパレル販売・接客スタッフ」「美容部員・エステスタッフ」「飲食・接客スタッフ」と続きます。
どれも肉体労働に加えて客を相手にした接客も関わってくる職種であり、身体的な辛さに加えて他者との関わりがストレスになる仕事といえます。
やはり、身体面と精神面どちらも同時に追い詰められることが退職代行の利用につながっているようです。
退職代行サービス利用者の「退職理由・原因」
最後に、退職代行を利用した人たちの具体的な退職理由について見てみましょう。
退職理由・原因 | 割合 |
肉体的・体力的に耐えられない | 13.40% |
ストレス・精神的に耐えられない | 12.60% |
職場の人間関係(いじめ・嫌がらせ・パワハラ・セクハラ) | 11% |
すぐに辞めたいのに辞められない | 9.50% |
仕事内容が向いていない・自分の力が発揮できない | 8.10% |
職場に居づらくなった(大きな失敗をした等) | 7.50% |
部署異動や転勤に不服 | 7% |
社風や職場の雰囲気が合わない | 6.50% |
入社前と入社後にギャップ | 5.80% |
給料が不満 | 5.10% |
労働環境に不満 | 4.20% |
社外・取引先との人間関係がつらい | 3.70% |
親族の介護や看護 | 2.20% |
起業・独立・実家を継ぐ等 | 1.90% |
その他 | 1.50% |
「肉体的・体力的に耐えられない」「ストレス・精神的に耐えられない」という心身の限界を理由に退職した人が全体の26%と1/4を占めています。
続いていじめやパワハラといった人間関係が11%です。
上記のような退職理由は退職代行の利用の有無関係なく多いもので、たくさんの人が仕事による心身の負担に悩みを抱えていることがわかります。
また、職場でのいじめやパワハラはニュースにも取り上げられることもあり、社会的な問題として認識が高まってきました。
心や体に負担をかけ続けることでうつ病をはじめとした精神的な病に侵される人も少なくなくありません。
「うつ状態」で自力で退職できない、もしくは手遅れになる前に退職代行を使うという人が増えてきているということでしょう。
そして、その次に多い「すぐに辞めたいのに辞められない」に関しては退職代行の利用者ならではと言える理由です。
執拗な引き留めや、退職を受理しないことによる引き延ばしは退職代行であればすぐに解決できる問題ですね。
業者が会社との間に入って退職の申し出やその他の連絡を伝言してくれることで、それまでなかなか辞めさせてもらえなかった人でも即日退社することが可能です。
その他は労働環境や給与に不満があったり、社風や仕事内容とのミスマッチといったものも目立ちます。
待遇改善を要望するという手もありますが、全く耳を傾けてくれない会社の場合は早めに見切りをつけるという意味でも退職代行を使ってスピーディーに退職するのは賢い判断かもしれません。
まとめ:退職代行は働き盛りの若年層から支持される次世代のサービス!
今回は退職代行サービスの利用者の統計から、どのような人が利用しているのが実情を紐解いてきました。
まとめてみるとこのような結果になりました。
- 女性より男性の方が多い
- 20代の利用が最も多く、20〜30代の若い層がメインの利用者
- 首都圏や大きな都市の利用比率が高いが、全国区で利用が広がっている
- 肉体労働や精神的負担が大きい業界・職種の利用者が多い
- 心身にかかる負担やいじめ・パワハラといった問題を抱えた人が状況打破の手段として退職代行を選んでいる
終身雇用が当たり前の時代から、今は「転職は当たり前」という風潮に切り替わってきており、転職意識の高い若い世代は特に退職代行を支持しています。
仕事によって心身をすり減らしたり、会社でいじめやパワハラを受けて「逃げる」手段として退職代行を使う人がメイン層ではありますが、自分の力を発揮するためやより良い労働環境を求めた前向きな利用者も一定数おり、「転職のための退職代行」という理由はこれから増えてくる可能性も高いです。
退職代行は比較的最近生まれたばかりであり、知名度や利用者数共にこれからさらに拡大していくであろうサービスです。
退職について悩んだ時の手段として一般的になる時代も意外と近いかもしれませんね。