民間業者の退職代行サービスと弁護士による退職代行の違いと非弁行為について
目次
依頼者に代わって退職に関わる手続き等を行ってくれる退職代行。
一言で「退職代行」と言っても、実は大きく分けて2種類存在していることをご存知でしょうか?
- 弁護士が行う退職代行
- 民間業者による退職代行サービス
同じ退職の代行を行う仕事でありながら、この2つには大きな違いがあります。
それは「弁護士でないと行えない業務ができるかどうか」。
今回はこの2つの業態の違いや「非弁行為・弁護士法違反」に触れつつ、それぞれのメリット・デメリットにスポットを当てて解説を行います。
退職代行による退職を検討している方は、どちらに依頼すべきか参考にしてみてください。
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民間の退職代行業者と弁護士・法律事務所に依頼する違いを比較【メリットとデメリット】
退職代行サービスは違法?論点となる「非弁行為」とは
退職代行って違法なの!?
— arako@半年でマイナス22キロ (@tarareba_arako_) October 29, 2018
退職代行業務が「非弁行為(弁護士法違反)」に当たるのでは、という意見を見かけることがあります。
非弁行為というのは、弁護士法第72条によって定められている事項です。
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
(譲り受けた権利の実行を業とすることの禁止)
引用:e-GOV法令検索
「弁護士の資格を持たない人が、利益を得る目的で法律事務を行ってはいけない」ということが述べられています。
退職代行サービスの行っている業務が、この「法律事務」に当たるのでは、という疑いから「違法ではないか」と噂されているということですね。
では、どのような業務がこの「法律事務」に当たるのかまとめてみます。
- 法律相談
- 示談交渉
- 債務整理
- 請求行為
- 法的書類の作成
- ネット誹謗中傷の対策
ここで、一般的な退職代行サービスが行っている業務が法律事務に該当するのか検証してみましょう。
- 依頼者の退職の意思を会社に伝える
→そのまま伝達をするだけなので法律事務に当たらない - 依頼者作成の退職に関する書類を会社に提出する
→書類は依頼者本人が作成し、それを預かって提出するだけなので法律事務に当たらない - 依頼者と会社の間に入り、互いの連絡事項や返答を伝達する
→aに同じ
つまり、民間の退職代行サービスは弁護士法に抵触しない行為について依頼者の代わりに代行しているので、結論を言うと違反には当たりません。
しかし、下記のような業務が発生した場合は弁護士以外が行うと非弁行為に当たってしまうので、民間の退職代行サービスでは対応することができません。
- 依頼者に法的なアドバイスを行ったり、相談を受けること
- 有給休暇取得の交渉や、退職日の調整
- 未払いの給料、慰謝料、退職金、損害賠償の慰謝料などの請求
- 退職に際した書類の作成
このような業務を退職代行に依頼したい場合は、弁護士事務所か弁護士を擁する退職代行の会社を利用する必要があります。
弁護士に退職代行を頼むメリット・デメリット
弁護士に退職代行を頼むメリット【業務範囲が広い!!】
- 会社との交渉が可能
※有給休暇の確実な取得や希望退職日の調整など - 未払金や退職金の請求
- 労災の申請やパワハラ、セクハラ等に対する慰謝料の請求
- 保険や年金の手続きをしてもらえる
- 退職に際して会社と揉め事があった時に解決に動いてもらえる
対応できる範囲が広いため、様々なトラブルにも対応できるのが弁護士による退職代行の大きなメリットです。
弁護士に退職代行を頼むデメリット
- 依頼料が民間の退職代行サービスに比べて高額
- 対応時間が限られる
- 人手不足による対応の遅れが出る可能性
一番のデメリットは費用面でしょう。
民間の退職代行に比べると相談料等も含めると2〜3倍の料金がかかることがあります。
また、土日がお休みであったり営業時間が限られている、在籍弁護士の手が空いていない等の理由で即日対応が難しいことも。
とにかく急いで退職したい方には大きなマイナスポイントになるかもしれません。
民間の退職代行サービスを利用するメリット・デメリット
民間の退職代行業者を利用するメリット
- 即日対応、即日退社も可能なスピード感
- 費用が安くコスパがいい
- 退職代行専門
- 実績が多くフレキシブルな対応
- 退職後の転職にもサポートあり
退職代行サービスの強みは費用面。
相場でおよそ3〜5万円程度で退職代行を請け負ってくれます。
また、公式サイトからいつでも申し込みが出来、対応が早いという点も大きなメリットです。
とにかく早く会社を辞めたいという依頼者には嬉しいスピード感で動いてくれます。
民間の退職代行業者を利用するデメリット
- 交渉や請求業務ができない
- 悪徳な業者に当たってしまう可能性
- 退職に際した書類作成や、保険・年金等の手続きは自分で行わなければいけない
非弁行為に当たる業務は対応不可なので、退職するに当たって有給や退職金の支給で会社と揉めても退職代行サービスは手を出すことができません。
むしろ、そこで交渉や請求行為を行うようであれば違法であり、悪徳な業者である可能性も。
※補足:交渉や請求業務ができないについて【非弁行為・弁護士法違反のリスクを回避対策】
最近であると、民間の退職代行事業者であっても弁護士や行政書士と連携あるいは実業務を実施させたり、
労働組合の活用といったことを行い、「非弁行為・弁護士法違反」のリスクを回避する手法を持ち合わせた業者もあります。
弁護士事務所と退職代行サービス、こんな場合はどちらに依頼するのがベスト?
弁護士事務所に退職代行を依頼した場合と、退職代行サービスを利用した場合のそれぞれのメリット・デメリットについてご紹介しました。
主なポイントを簡単にまとめた表がこちらです。
弁護士事務所 | 退職代行サービス | |
退職の意思の伝達 | ◎可能 | ◎可能 |
交渉・請求等の業務 | ◎可能 | ×対応不可 |
料金の相場 | △5万円〜 | ◎3万円前後 |
相談料 | △5千円〜1万円 (無料の事務所も有) |
◎無料 |
対応速度 | △即日対応できない場合も | ◎24時間・即日対応 |
先ほどご説明したように、退職代行サービス自体が違法に当たるということはありません。
ただし、民間の退職代行業者は、弁護士法違反や非弁法にあたるため、企業への交渉などができないため、未払い残業代請求やトラブルごとも退職時に解決したい場合には、業務範囲の広い弁護士への依頼が必要です。
※しかし、実態としては、民間の退職代行業者であっても労働組合が運営することで非弁法の回避をしているケースがあるので交渉ができる場合があります
そのため、弁護士事務所・退職代行サービスどちらに依頼をするかは、どのような依頼をしたいかによって使い分けるのがおすすめです。
弁護士に退職代行を頼むべきケース
- 有給休暇取得や退職金の支払いを会社に求めたい場合
- パワハラやいじめ等の慰謝料を請求したい場合
- 退職に際して会社側から賠償請求などの支払いを求められた場合
- その他法的に会社と揉めた場合
交渉や請求行為ができることが弁護士ならではの強み。
特に、会社からセクハラ・パワハラ等の慰謝料を取りたい人や、賃金や残業代の未払いを取り戻したいといった事情がある方は、多少高い依頼料を払っても弁護士に依頼した方がいいでしょう。
退職代行サービスを利用すべき人
- 退職さえできれば良い人
- すぐにでも退職したい人
- できるだけコストを抑えたい人
- 退職後の転職に関してもサポートを受けたいと考えている人
とにかくすぐにでも会社を辞めたい!という人には退職代行サービスがぴったり。
特に会社側と揉めるようなこともない場合は交渉業務も必要ありませんし、24時間対応してくれる退職代行サービスならリーズナブルな料金で即日退職も可能です。
基本的に、退職の意思を伝えられた会社はスムーズに対応してくれることが多いので、よほど心配事がない限りは民間の退職代行サービスで問題なく退職できます。
通常の伝達業務を行ってもらうだけであれば非弁行為に当たることもなく、安心して利用できますね。
弁護士法に違反してない?退職代行業者を選ぶときに気をつけたいポイント
退職代行か。
なりすまし依頼ってないのかな?— 意識低い系のβ細胞 (@UselessBetaCell) August 28, 2019
退職代行業者に依頼をすると決めた時、業者選びの段階で注意しておきたいポイントをご紹介します。
もし非弁行為を平然と行うような業者を利用してしまうと、依頼者自体には罰則がある訳では有りませんが、思うように会社が辞められなかったり最悪の場合退職代行サービスと会社とのトラブルに巻き込まれてしまう可能性があります。
下記のような点をよく確認してから退職代行サービスに申し込むようにしましょう。
- 公式ホームページがあり、会社情報がしっかりと記載されている
- 退職代行サービスとしての業務範囲をちゃんと守っている(交渉もします!といった謳い文句がない)
- 親族へのなりすましなどを行わない
- 顧問弁護士による指導を受けている
ほとんどの退職代行サービスは無料相談を受け付けていますので、心配であればまず事前に相談し、違法行為を行っている業者ではないか見極めをしてみるといいですね。
まとめ:退職代行サービスは違法ではない!依頼内容によって弁護士事務所との使い分けを
退職代行に関わってくる非弁行為について解説しました。
民間の退職代行サービスが違法に当たらないことがおわかりいただけたと思います。
しっかりと業務範囲を守って退職代行を行っている業者であれば、安心・安全です。
弁護士事務所と退職代行サービスそれぞれのメリット・デメリットを理解し、自分が退職代行を依頼するに当たってどんな対応を求めているかを確認して依頼先を決めるようにしましょう。
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