人手不足を理由に引き止めにあった時の対策を解説!
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近年企業の人手不足がしばしば話題に上がります。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構の「人手不足等をめぐる現状と働き方等に関する調査(企業調査・労働者調査)」によると、令和元年の調査時で正社員の雇用人数が不足していると答えた企業は全体の6割にものぼりました。
人手不足は労働時間超過や休日出勤の原因に直結し、労働環境を悪化させます。
その結果様々なリスクを引き起こすのですが、その一つとして「退職希望者を辞めさせない」という姿勢の会社が増えるというものが挙げられます。
しかし「辞めたいのに辞められない」という状況は労働者にとって非常にストレスがかかります。
現に「引き止めにあって辞められない」という悩みを抱えている人は多く、エン・ジャパン株式会社の運営するサイト「ミドルの転職」において行ったアンケートで、退職時に最も多いトラブルは「企業による強引な引き止め」であったことからもそれが伺えます。
会社を辞めたいと申し出た時に執拗に引き止めにあった場合、どのように対処するのが良いのでしょうか。
今回は引き止めによって辞めたくても辞められない状況に追い込まれた人の解決法について解説していきます。
「人手不足だから辞めちゃダメ」は実はNG
当然のように横行している退職の引き止めですが、実は法律に違反する可能性もあることをご存知でしょうか。
労働基準法第5条に下記の規定があります。
第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
引用:e-Gov 労働基準法
雇用主は労働者に対して働くことを強制してはいけないという法律です。
よって、従業員が退職の意思を示しているのにもかかわらず、しつこく引き止めを続けて働かせるのは労働基準法に違反することになるのです。
どんなに強い言葉で退職を止められても、会社側には法律的な強制力はありません。
そもそも人手不足は会社の責任
人手不足が起こるのは、会社側が業務量にあった人材確保や育成を怠ったからです。
従業員の採用や育成にちゃんと時間とお金を割いて、力のある社員を適正な数揃える努力をしていれば、辞めたい人を引き止めるほどの人手不足は起こらないのです。
「人が足りないから辞めないで欲しい」と言われたら辞めることに罪悪感を感じてしまうでしょう。
しかし、完全に会社のせいで起きている事態だと考えれば、自分が多くの時間や心身の健康を犠牲にして働くというのはおかしいと感じるのではないでしょうか。
引き止めにあった後働き続けることのメリットデメリット
では、実際引き止めにあって退職を諦めてしまった場合はどうなるでしょうか。
会社に残って働き続けることのメリット・デメリットを挙げてみます。
メリット
メリットとして挙げられるのは下記のような点です。
- 転職活動をしなくて良い
- 生活の基盤が変わらない
- 退職や転職に際した手続きをしなくて良い
退職を諦めた場合は、今まで通りの日々が続きます。
転職活動や職場が変わることによる引越しの労力は必要なくなりますし、諸々の手続きもなくなります。
今の会社で「仕事辞めたい」と思いながらも生活を変えずに働き続けることと、転職に関連したことにかける労力を天秤にかけて面倒臭さが勝った場合は引き止めを受けて会社に残るといいかもしれません。
デメリット
一度上司なり人事なりに退職の意思を伝えるほどの会社なのであれば、辞めずに働くことにはデメリットの方が多くなります。
- 辞めたいと思い続けながら働くストレス
- モチベーションを保つのが苦痛
- 仕事で嫌なことがあると「本当なら辞めていたはずなのに」と後悔する
- 仕事や会社への悩みが根本的に解決しない
- やりがいや楽しさといった前向きな気持ちが起こらない
- スキルアップに対する気力が沸かない
人手不足の会社ということは、まず慢性的に激務であることが想像できます。
辞めたいという気持ちも抱えながら、毎日の長時間勤務を続けているといつか精神的に限界を迎えてしまいます。
その結果うつ病をはじめとする精神疾患にかかると、長期にわたる治療が必要になったり、悪化すると働くこともできなくなってしまいます。
人手不足による引き止めをうまく回避するには?
退職の意思を強く持つ
いざ勇気を出して退職の申し出をしても、しつこく引き止めをされると「もう少し頑張ってもいいかな…」と揺らいでしまったら会社側の思う壺です。
どんな引き止めの言葉にも心が揺れないよう、「絶対辞める!」という意思を強く持ちましょう。
ちょっとしたスキを見せたら、そこにうまく入り込んで言いくるめられてしまうこともあります。
「何を言われても退職の気持ちは変わりません」と毅然とした態度で上司に伝えるようにするのが大切です。
できるだけ早く退職を伝える
一般的に会社への退職の申し出は1ヶ月以上前というのが通例です。
細かいルールについては就業規則に記載があるかもしれないので確認しましょう。
しかし退職を伝えるのは1ヶ月前でOKと考えるのは危険です。
- 1ヶ月じゃ後任の人を決められない
- 引継ぎ期間として不十分
- ちょうどその頃忙しくなるからもう少しいて欲しい
- 急な話で求人が出せない
このように会社側からごねられてしまう可能性も高いのです。
「辞めよう」と決めたらすぐにでも伝えて話を進めるようにしましょう。
2〜3ヶ月あれば会社側としても求人を出して代わりの人材を補充することも可能ですし、引継ぎ期間としても十分なので強く引き止める理由もなくなります。
引き継ぎについて作戦を立てておく
会社からの引き止めの理由としてよく言われるのが「引き継ぎ」についてです。
「今辞めたら引継ぎもできなくて社内に迷惑がかかる」という常套句を言わせないよう、先に手を打っておくと良いでしょう。
引継ぎプランを作って提案するなり、頼める同僚がいたら引き継いでもらえないか相談してみたり、「今辞めても会社側はそんなに困らないよ」という証拠をできるだけ作っておくのです。
自分がしている仕事をリストアップし、引き継ぎが必要な項目についてまとめてみると良いですね。
繁忙期はあらかじめ避けておく
会社の繁忙期に退職を申し出るのはほぼ確実に引き止めにあいます。
普段なら親身に相談に乗ってくれたり、話を聞いてくれる上司だとしても、繁忙期という一番忙しい時期に退職の話をしたら簡単に認めてはくれないでしょう。
また、その申し出のせいで社内の空気をピリピリさせてしまう可能性もあります。
よって繁忙期が分かっていればあらかじめその時期は避けて退職の計画を練るようにしましょう。
逆に、「繁忙期はしっかり頑張るので、それが終わったら辞めます」という切り札に使うという手もあります。
退職に適した時期に関してはこちらの記事で解説していますので参考にしてみてください。
退職代行を依頼するベストなタイミング・時期はいつ頃がおすすめ?【転職しやすい時期やボーナス支給直後】
その場で退職の了承を得る
退職の話をした際は、その場で上司に返答をもらうようにしましょう。
「検討して返事をする」「今忙しいので少し待って」と言われて一度話を終わらせることで、結論を先延ばしにして退職の話をなあなあにされてしまう恐れもあります。
もしこのようにその場での返答を避けられそうになったら、退職の意思はどうしても変わらないということを伝えてその場で了承をもらえるよう再度念を押してください。
強い意思が伝われば、上司も「これ以上引き止めてもどうしようもないな」と感じて引き下がってくれるでしょう。
退職理由は会社側の付け入る隙がないものを
退職の話をする際には必ず辞めたい理由についても聞かれます。
その時に正直な理由を告げることは大事ですが、場合によっては少し工夫しないと引き止めの材料にされてしまうかもしれません。
- 労働時間の長さ、残業の多さ
- 給与面の不満
- 社内でのいじめやハラスメント
- 人間関係
上記は退職理由としてよく挙げられるもので、実際「今辞めたいと思っている理由がこれ」という人も多いでしょう。
しかし、このような会社が原因の理由であると、「改善するから待ってくれ」と言って引き止めてくる可能性があるのです。
多少の嘘になってしまっても、退職理由は家庭の事情やすでに転職先が決まっているなど、辞めざるを得ないものにしましょう。
引き止めを断れない…そんな時勇気を出すコツ
退職の話というものはただでさえ緊張してパワーを使うものです。
そんな中、情に訴えられたりおどしのような言葉で引き止められたら心が揺らいでしまうかもしれません。
引き止めにあったらしっかり断れるか不安な人は、下記のように考えを切り替えてみるのがおすすめです。
世の中にはたくさんの会社がある
仕事というのは生活に直結するものなので、会社を変えるということで「失敗したらどうしよう」と不安になるのは当たり前です。
しかし、世の中にはたくさんの会社があります。
現に、今働いている会社も多くの求人の中から探して採用されたものですよね。
今の会社にしがみついていても、辞めたいというストレスを抱え続けるだけです。
たくさん企業がある中で、「こんなところでくすぶっていたら損!」と考えてみてはいかがでしょうか。
万年人手不足を嘆く会社は将来的にも期待できない
最初に「人手不足は会社の責任」ということを述べましたが、そんな状況を常に繰り返して辞めたがっている従業員を縛り付ける会社は、これから先もずっと変わらないでしょう。
きちんと人材の補充や育成もできない会社は将来性も期待できません。
従業員が1人辞めることで業務が回らなくなるとなると、経営方針としても破綻していますよね。
情に流されてい続けても自分が苦労するだけだと考えれば、「辞めよう」という気持ちも強く持てるのではないでしょうか。
迷惑をかけてしまうと考えない
よく退職に関する悩みで聞かれるのが「辞めたら周りに迷惑をかけるのではと思って辞められない」というもの。
確かに、辞めた直後は少し周りが大変な思いをするかもしれません。
しかし、それは一時的なものでちょっとすればすぐ通常営業に戻るはずです。
それに、従業員が辞めた後の立て直しを考えるのは本来会社のするべきことであり、あなたが責任や罪悪感を感じる必要はないのです。
引き止められてももう限界!そんな時はどうする?
引き止めをしてくる会社への対策方法をご紹介してきました。
上記のポイントをよく理解して応用できれば、ほとんどの場合はちゃんと辞めることができるでしょう。
しかし、世の中には常識が通用しない会社も存在します。
いわゆる「ブラック企業」と呼ばれる会社の場合、一般的な話は通じず、しつこい引き止めや脅しがさらに激化し、非常につらい思いをする羽目になることも。
あまりにその状態が続くと、「もう辞めるという話をするのがしんどい」となって退職を諦め、ストレスで心身を壊すという結果にもなりかねません。
労基に相談する
労働基準監督署、いわゆる労基は職場でのトラブルについて相談に乗ってくれます。
労基は労働者がきちんと労働基準法にのっとった適正な環境で働いているかチェックしている機関です。
労基が監査に入ったとなると、会社の信用もガタ落ち。
なので、「ここまで言っても辞めさせていただけないなら労基に話をします」というだけでも、切り札としても効果を発揮します。
退職トラブル解決しました!労基に相談するぞ!って言ったら会社があっさり引き下がりました。
— あとちゃん (@sasakiki_s) October 13, 2020
実際に退職時にトラブルになった人で、労基への相談を切り札に使っている人もいました。
個人の力ではなかなか動かない会社も、このような公的機関が相手となると一気に形勢逆転できます。
どうしても辞められなければ退職代行の利用を検討
もう自分の力ではどうにもできないということでしたら、退職代行の利用を検討する段階かもしれません。
退職代行は本人の代わりに会社へ退職の申し出を行い、その後退職の手続き終了までサポートしてくれるサービスです。
第三者である業者が間に入ることで、会社も手出しができないとあっさり諦めることがほとんど。
自分で連絡を取ったり、上司に顔を合わせることなく即日退職も可能です。
依頼に際して費用が数万程度発生しますが、しつこい引き止めで疲れ切った人にとっては業者がサクッと退職を勝ち取ってくれるので十分に利用価値があるサービスと評価も高いです。
退職代行は3万だった スムーズに辞められたので安いもんだった #20卒 #20卒辞めたい #新卒 #新卒辞めたい
— 砂糖漬け (@mnmnm_01) July 25, 2020
退職代行を使いたい、気になるという方はこちらの記事で利用の仕方や流れなどを詳しくまとめています。
ぜひ読んで参考にしてみてください。
退職代行サービスの仕組み・流れ・使い方【申し込みから退職完了・利用後の手順を解説】
まとめ:会社からの引き止めは対処法のポイントを押さえて強い気持ちで対応しよう!
会社からの引き止めは退職時のトラブルとして非常に多いものです。
ですが、しつこい引き止めで無理やり従業員を働かせるのは法律的にもアウトであり、良い会社とは決して言えません。
辞めると決めたら、「絶対退職する!」という強い気持ちもつことが大切です。
今回は引き止められた時にどのようにすべきか、対処法をいくつかご紹介しました。
自分の気持ちだけでは負けてしまいそうな時、ぜひ役立ててみてください。
考え方を切り替えるだけでもスムーズに話が進むかもしれませんよ。
あなたの「辞めたい」という願いが叶い、穏やかな日々が訪れることを祈っています。